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ブレイブ・ストーリー|宮部みゆき

急に読みたくなって、10年ぶりにページをめくった。ついでにアニメ映画も観た。
小学5年生だった当時とは全然違うことを感じ、物語の深さに驚かされた。

<あらすじ>
小学5年生の三谷亘はゲーム好きの普通の少年だった。ある日亘は、近所の建設途中のビルの中で、転校生の芦川美鶴が上級生に縛られリンチされている現場に居合わせる。亘が身を呈して美鶴の拘束を解くと、美鶴は魔術を使い、上級生の魂を奪って姿を消してしまった。
そんな中、亘の父が不倫相手の女と暮らすために一方的に家を出てしまう。ショックでガス心中を図る母。ガスが充満する中で眠っていた亘を起こしたのは、姿を消していた美鶴で「運命を変えたければ、ビルの屋上の扉から”幻界”に行け」と言う。
彼の呼びかけに応じ、家族を取り戻すために”幻界”に旅立った亘の冒険が始まるーー

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主人公の亘と同じ歳で初めて読んだ時は、ドキドキする異世界冒険モノで面白い!
とただただ夢中になっていた。
でも今読み直すと、亘が旅をする
”幻界”で起きていることは、戦争、人種差別、圧政など今までの歴史上に起こった数々の出来事がベースになっていることが分かる。

「己と姿形の違うものを嫌ったり、考えの違うものを退けたり、何かを厭うたり、誰かを嫌ったり、他人よりは常にいい思いをしたいと願ったり、他人の持っておるものを羨んだり、それを奪おうと企んだり、
己が幸せになるために、他者の不幸を望んだりする心が、あなたの中にも存在する

幻界の長老学者が亘に、こう語るシーンがある。
これこそ、宮部みゆきが描こうとしたものなのかな。この作品は、ファンタジーの形をとって、社会の不条理に異議を唱え、人間の醜い心に光を当て、正義とは何かを問うている物語だと感じる。


それは、これを冒険小説として読む小学生には気付けない、まだ分からなくていい。
世界の残酷な歴史とか、今の社会で虐げられている人々の存在とか、そう言う一切を学び終わった大人は、この小説の一つ一つの言葉がグサッと胸に刺さるはず。

ちゃんと読むと、決して児童向けファンタジー小説ではなくって、大人のための勇気のハナシなのだと思いました。

迷っても、揺らいでも、正義を貫く勇気が欲しい。
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