「君は、この僕が畏れ敬う数少ない人なんだから、どんなときも泣いたりしないでよ。」

この一文に強烈に惹かれた。


アンティークショップ「フラココ屋」でアルバイトをする根無し草の「僕」、謎多き店長、常連の気ままなアラサー女性「瑞枝さん」、 ご近所の美大生「朝子さん」とその妹で定時制高校に通う「夕子ちゃん」・・・フラココ屋を接点として集まった、年齢も境遇も異なる男女の群像劇。

思わず書き留めたくなるような独特な表現、会話と地の文が一体になったような文体が美しくて、スッと世界観に入り込めるような小説。

明確な目的はない、だけどちょっとした悩みや感動や変化を重ねながら、永遠に終わりのない旅のように続いてゆく生活。そんな、やり場のない気持ちが表現されているように感じる。 
好きだなぁ。