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SCOOP! 監督:大根仁
鑑賞:吉祥寺東亜興行チェーン


作り込まれた画面、一癖ある魅力的な登場人物、エッジの効いたストーリーで総じて面白かったのですが、ストーリー展開に若干穴があるというか、大きな伏線が回収されずに終わったのは消化不良感が残りました。

<あらすじ>
かつて写真週刊誌“SCOOP!“に所属し、数々のクープをモノにしてきたカメラマンの都城静(福山雅治)は、今はフリーになり、芸能スキャンダルを中心に追うパパラッチに成り下がっていた。そんな彼が、編集部の新人記者・野火(二階堂ふみ)とタッグを組むことに。
静のかつての相棒・定子(吉田羊)や、謎の情報屋・チャラ源(リリー・フランキー)など、アクの強いメンバーと共に追う、静の人生を賭けた大スクープとは・・・?
 


大根監督らしい、センス良く作り込まれた画面、素早い展開もみていて気持ちがいい。
主人公の静と野火、脇役たちもキャラが立っていて興味深い。役者も上手くて個性的。

爽やかイメージの福山雅治が、チャらくてエロい、ダーティなパパラッチ役に意外とはまっているのも見所です。(ファンがそれをどう思うかはちょっとわかりませんけど)

また、主人公が「芸能スキャンダル専門のパパラッチ」という設定の持つの薄暗さが、「見てみたい」というドキドキ感を引きたてています。

カメラマンとしての腕は確かなものの、ある事件から"SCOOP!"編集部を辞め、すっかりヤサグレていた静の心を変えていく若手記者の野火を好演した二階堂ふみも印象的でよかった。




「チャラ源と定子も関わるなんらかの事件が原因で静は編集部を辞め、その件に関して、静はチャラ源に借りがあるっぽい」という、何度も出てきた伏線が全く回収されなかったのには「???」という感じです。とても消化不良。
何か、その部分を作れない事情でも生じたのかと思ってしまいます。

また、「盗写1/250秒」という原作TVドラマに縛られすぎたのか、後半は話の展開が急すぎて。代議士の女子アナ不倫密会の盗撮のところなど、もう少し掘り下げて欲しかったという感じが残ります。

あとはまぁ、作品全体のテーマ性は感じられません。娯楽映画としてはそれでいいけれど、静が「戦場カメラマンのロバート・キャパに憧れてカメラマンを志した」と寂しげに語るシーンなど、ヒューマンっぽい要素が少し入っているだけに「その心の葛藤をもう少し見たい」と思ってしまう。


**
文春にも記事を載せている知り合いのライターさんの話だと、「多少誇張はされているものの、週刊誌取材の現場がリアルに描かれている」とのことなので。
張り込み取材がいかに大変で虐げられた仕事か、でもどうして私たちは芸能ゴシップを見て喜ぶのか・・・なんてことも考えさせられるかも!
 
 
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ここからはネタバレ含みます。
ラストシーンについて思ったことをただ語ります。

ロバート・キャパの名を世界に知らしめた写真「崩れ落ちる兵士」 に擬えた衝撃的なラスト。
あれは、パパラッチというある意味戦場に身を置いた静の、人生を賭けた一枚だった・・・ということなんだと思います。
でも、身を呈してスクープを作るんじゃなくて、やっぱり最後まで撮る側でいて欲しかった。

最後の、チャラ源が引き起こした事件のシーンだけ妙に現実味がなくて(SATの出方とか)取ってつけたような演出になってしまっていたのも、 そう感じた原因かもしれない。野火との関係もあそこまで描いて欲しくなかったし、静がいなくなった後もあんなすぐ立ち直らないでしょ?とか、まぁ突っ込みどころが多かった。
そこまでがとても良かっただけに少し残念。

ファッション誌上がりでダメダメ記者だった野火が、静に鍛えられたおかげで一人前に成長し、静も若い野火に触発されて初心を思い出す、というところをもう少し繊細に描いて欲しかった。
そして、ラストは"SCOOP!"は野火に任せ、静は生きていて、夢だった戦場に写真を撮りに行く・・・とかが良かったなぁ。


超個人的な感想でした。