どうも、ミズキといいます(*・ω・)
都内の大学四年生
おもに音楽、映画、本の感想など


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「君は、この僕が畏れ敬う数少ない人なんだから、どんなときも泣いたりしないでよ。」

この一文に強烈に惹かれた。


アンティークショップ「フラココ屋」でアルバイトをする根無し草の「僕」、謎多き店長、常連の気ままなアラサー女性「瑞枝さん」、 ご近所の美大生「朝子さん」とその妹で定時制高校に通う「夕子ちゃん」・・・フラココ屋を接点として集まった、年齢も境遇も異なる男女の群像劇。

思わず書き留めたくなるような独特な表現、会話と地の文が一体になったような文体が美しくて、スッと世界観に入り込めるような小説。

明確な目的はない、だけどちょっとした悩みや感動や変化を重ねながら、永遠に終わりのない旅のように続いてゆく生活。そんな、やり場のない気持ちが表現されているように感じる。 
好きだなぁ。



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ブレイブ・ストーリー|宮部みゆき

急に読みたくなって、10年ぶりにページをめくった。ついでにアニメ映画も観た。
小学5年生だった当時とは全然違うことを感じ、物語の深さに驚かされた。

<あらすじ>
小学5年生の三谷亘はゲーム好きの普通の少年だった。ある日亘は、近所の建設途中のビルの中で、転校生の芦川美鶴が上級生に縛られリンチされている現場に居合わせる。亘が身を呈して美鶴の拘束を解くと、美鶴は魔術を使い、上級生の魂を奪って姿を消してしまった。
そんな中、亘の父が不倫相手の女と暮らすために一方的に家を出てしまう。ショックでガス心中を図る母。ガスが充満する中で眠っていた亘を起こしたのは、姿を消していた美鶴で「運命を変えたければ、ビルの屋上の扉から”幻界”に行け」と言う。
彼の呼びかけに応じ、家族を取り戻すために”幻界”に旅立った亘の冒険が始まるーー

**

主人公の亘と同じ歳で初めて読んだ時は、ドキドキする異世界冒険モノで面白い!
とただただ夢中になっていた。
でも今読み直すと、亘が旅をする
”幻界”で起きていることは、戦争、人種差別、圧政など今までの歴史上に起こった数々の出来事がベースになっていることが分かる。

「己と姿形の違うものを嫌ったり、考えの違うものを退けたり、何かを厭うたり、誰かを嫌ったり、他人よりは常にいい思いをしたいと願ったり、他人の持っておるものを羨んだり、それを奪おうと企んだり、
己が幸せになるために、他者の不幸を望んだりする心が、あなたの中にも存在する

幻界の長老学者が亘に、こう語るシーンがある。
これこそ、宮部みゆきが描こうとしたものなのかな。この作品は、ファンタジーの形をとって、社会の不条理に異議を唱え、人間の醜い心に光を当て、正義とは何かを問うている物語だと感じる。


それは、これを冒険小説として読む小学生には気付けない、まだ分からなくていい。
世界の残酷な歴史とか、今の社会で虐げられている人々の存在とか、そう言う一切を学び終わった大人は、この小説の一つ一つの言葉がグサッと胸に刺さるはず。

ちゃんと読むと、決して児童向けファンタジー小説ではなくって、大人のための勇気のハナシなのだと思いました。

迷っても、揺らいでも、正義を貫く勇気が欲しい。
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tekkon
鉄コン筋クリート  監督:マイケル・アリアス

<あらすじ>

義理人情とヤクザが蔓延る町・宝街。そこに住む孤児の少年・”クロ”と”シロ”は、驚異的な身体能力で街の中を飛び回理、喧嘩・カツアゲで生計を立てていた。
そんなある日、宝街に、ヤクザの”ネズミ”、3人組の殺し屋、”蛇”という名の起業家の男が現れる。そして、子供たちをターゲットにした「子供の城建設プロジェクト」が立ち上げられ、町は不穏な空気に包まれる。

 **
 
レトロな雰囲気が漂い、東京とタイとインドを混ぜ合わせたような混沌とした「宝街」 がなんとも言えず美しく、ディテールにこだわった絵柄が独特な世界観を醸し出している。

街に住み着く孤児の少年で喧嘩が強いクロと、彼に守られ行動を共にするシロ、長年街を仕切ってきたヤクザ、警察、そして新規参入してきた都市開発組織の攻防がストーリーの中心だが、後半に向かうにつれて観念的なシーンが多くなり、多様な解釈ができる。

個人的には、シロの「クロの足りないネジ、シロが全部持ってる」という言葉がこの作品のテーマのように思う。 シロのように疑うことを知らぬ純粋さと、クロのような暴力性や狂気を併せ持って内に秘め、頑張ってそのバランスを保っているのが人間で、この混沌とした社会だと。


また、生活費を集めたり、喧嘩や盗みを行う時もいつもクロがシロを守っているように見えるが、その実精神的にはクロがシロに依存していて、シロ無しに生きることができないと徐々に分かってくる所も、描き方が巧いなぁ。

サイドストーリーながら、ヤクザのネズミと木村の師弟関係みたいな所も切なくて好きでした。

 


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フラワー・オブ・ライフ|よしながふみ

Wingsで連載されていた、よしながふみさんの青春学園漫画。現実に”いそうでいなさそうな”魅力的なキャラクターたちが送る、爽やかだけど、時々ほろ苦い、高1の一年間を描いた作品です。

<あらすじ>
 急性白血病の治療のため一年遅れて高校入学した花園春太郎。新しい学校生活に胸を膨らませた彼は、ぽっちゃりキャラで心優しい三国、傍若無人なオタク野郎の真島をはじめとする個性豊かなクラスメイト、オカマ風な担任教師や、漫研で出会った仲間達と共に、穏やかで一生懸命で、バカバカしいけど切実な悩み多きスクールライフを送る。


青春群像モノだが、読めば読むほどストーリーもテーマも深い。特に印象的だったのは、春太郎と三国の初ケンカの話と、春太郎と引きこもり気味の姉の話。 

積極的で正義感の強い性格の春太郎がクラス全員の前で三国を庇ったら、逆に目立ってしまって内気な三国が嫌がって帰ってしまったシーン。怒らせてしまった理由がわからず落ち込む春太郎に先生が言う
「自分にとっては平気な事でも、他人にとっては耐え難いことになるって時もいっぱいあんの、世の中には」
という言葉は私自身の心にも刺さった。

春太郎の姉が、 明るく振舞っていながらも、本当は彼の白血病再発リスクに毎日怯えていると吐露するシーンは、思わずジワっと来る。そして、この場面で明かされる「Flower of Life」というタイトルの意味。それをを知った時、普通の高校生が、普通の家族が、普通に過ごす日々が、普通だからこそ宝物のようにかけがえの無いものなのだと気が付かされる。

青臭くて、不完全だから時には人を傷つけて、それでも一生懸命に若い盛りを生きる姿をリアルに捉えて、静かな感動を運んでくれる作品。


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